どうも、リモートワークについて勉強中のwasabi( wasabi_nomadik)です。
最近非常に面白い本を読みました。
株式会社ソニックガーデンというシステム会社の代表取締役である倉貫義人さん著『リモートチームでうまくいく』です。
倉貫さんが社長を務める株式会社ソニックガーデンは「納品のない受託開発」というほかのシステム会社とは違った面白いかたちで、システム開発を受注するクライアントと受託を受ける会社側がwin-winになるようなビジネスモデルを実践しています。「納品がないってどういうこと?」と気になった方はキャリアハックの記事を読んでみてください。
そのビジネスモデルも面白いのですが、今回私が紹介したいのは倉貫さん( kuranuki)の会社で取り入れている「リモートワーク」についてです。
株式会社ソニックガーデンは率先してリモートワークを取り入れている会社です。書籍が出た時点では東京のオフィスと地方で在宅勤務をする社員はそれぞれほぼ同じ人数いたのですが今年6月現から完全にオフィスを撤退し、社員全員がリモートになったそうです。
このように、どこで働いても良いシステムを作ることに成功したソニックガーデン。一体、どんなふうにしてそのシステムを実現したのでしょうか?
リモートワークに伴ってどうやって彼らがやり方を変えたのか、そこから学ぶことができた情報と私がドイツで取材しているリモートワーカーの現況とも比較しながら本の内容に触れていきたいと思います!
Contents
リモートワークの問題は”サボる危険性”よりも”働きすぎる危険性”
リモートワークはどこでも働けるという利点がある反面、会社に来るわけではないので社員の働きぶりを常に監視することはできません。そうなると雇用側として心配になるのが「リモートワーカーは仕事をサボるのではないか?」ということです。その点にかんして本書ではこう書かれています。
リモートワークを始めると、サボるというよりも、むしろ働きすぎてしまうという問題が生じます。自宅でもどこでも仕事ができて、いつでも仕事ができるということで、時間があれば仕事をするようになってしまうのです。 オフィスで働くことの利点は、オンとオフの時間が明確に決まっていることです。(第6章)
この在宅ワーカージレンマは私自身も痛いほど経験しているのでとてもよく分かります。「いつでもどこでも仕事ができる=いつでもどこでも仕事しなければならない」という状況になる人は私の周りでも本当に多いです。
これはフリーやリモートワーカーにならないと想像がつきにくいかもしれませんが、「誰も監視していないからサボれる〜♪」と思う気持ちよりかは、「この素敵な働き方を維持するために(仕事を失わないために)頑張っているアピールをしなきゃ!」と思うのが人間の心なのです。
となると、リモートワークにおいて評価の対象となるのは「会社で頑張っている姿」ではなくて、「成果」に尽きます。実はこれが会社にとってプラスに働く可能性を秘めているのです。
リモートワークでは、〝働いているフリ〟はできないのです。結果、よりいっそう成果を意識した働き方をメンバーに促すことになり、チーム全体の生産性を高めることになるのです。(第1章)
残業を含め、働く時間の長さが評価されないシステムになると社員も意識的になるべく短時間のなかで効率を上げようという姿勢が生まれます。
そして、リモートワークで自由に自分で時間を管理できるようになるメリットはたくさんあります。通勤がないので家族と過ごす時間を多くとることができるし、子育中の人にとっては仕事の合間に子供の面倒や家事の手伝いをすることもできます。その反面、「誰に監視されないでも生産性の高い仕事をするには自分を厳しく律することができないと難しいのでは?」と想像する人もいるかもしれません。その点、倉貫さんが言っていたこの言葉が正論すぎました。
そもそも自分の働く時間をセルフコントロールできない人は、たとえオフィスで働いたとしても残業ばかりすることになりかねません。(第6章)
これと同じでリモートワークのせいで仕事をサボるような人はオフィスにいたって良い成果を期待できないでしょう。リモートワークはお互いの顔が見えないことに起因する特有の課題はあるにしても、根本的には普通のオフィスワークに共通して言えるマネージメントと重要な部分は一緒なのではないかという気がします。
チームの結束を保つためにコミュニケーションの方法を工夫
先にも言いましたが、リモートワークにおいてお互いの顔が見えないことはオフィスワークにはないリモートワーク特有の課題です。会社にいるときのように気軽に隣の同僚に声をかけることができないため、チームとしての結束感を意識的に保たなければいけないのです。倉貫さんいわく、オフィスにあってリモートになかったものは「存在感」と「雑談」だったのだそうです。
オフィスにいれば仕事をしている姿が見えるので存在感を感じることができますが、リモートの場合なにも発言しないで一人で黙々と仕事をしているとその人の存在感は薄くなってしまいます。定例のミーティングはSkypeなどのツールを使って時間を決めればリモートでも参加することはできますが、ちょっとした雑談はSkypeを常時接続しても会話が混雑してしまうため社員数が10人を超える場合には向かなかったのです。
そこで考え出したのが「リモートチームプレイス」という考え方です。これはリモートで働いている人同士が気軽に雑談することを目的とした発想で、簡単に言えば「リモートワーカーにとっての出社場所」ということです。ソニックガーデンはリモートチームプレイス「Remoty」を自社で開発し、1.)仕事中の様子を中継、2.)個人が気軽に書き込めるチャット、3.)社内の会話が全部見えるチャット、4.)グループ単位でまとめて情報共有できるチャットを盛り込み、雑談のしやすい環境やチームで働いている結束感を感じられる状態を作り出しました。
ちなみに、ここで言う雑談とは業務をほったらかしにして長々とおしゃべりすることではなく、雑談の中からふとした良いアイデアやイノベーションが生まれる可能性が重要視されています。実はこの「雑談」がチームの結束力を高めたり会社に新しいアイデアをもたらすのにとても重要なのだそうです。
私自身も、最近コワーキングスペースに通うようになって雑談の重要性を感じています。なんとなくモヤモヤしていることやちょっと嬉しかったことを少し誰かに話すだけでも自分の考えや喜びがはっきり明確になるし、逆に誰かの話で学ぶことや気づくこともとても多いのです。
ドイツ人はそもそもリモートワークを”問題”だと思っていない?
私が通うコワーキングスペースにもリモートワーカーの人が大勢いるので、リモートワーカーに出会う度に「リモートワークにあたってどんなことが問題か?」というインタビューをしています。そのなかで印象的なのが、多くの人はそもそもリモートワークを問題だと思っていないということです。どういうことかと言うと、「機能すればそれで全て良し。問題は出てきたらそれぞれ個別に考えれば良い。」という態度なのです。
日本でそこまでリモートワークが一般的になっていない理由として、前例が少ない働き方であることからその問題点や懸念点ばかりに注目が集まってしまっている印象を受けます。
もちろん考えられる問題点を洗い出して解決策を提示していくことで不安要素を減らすことは重要です。でも、スタート地点として「リモートワークができるかどうか?」ではなくて、「リモートワークでチームを動かすためにはどうすれば良いか?」という考え方がドイツのリモートワークから感じられるのです。また、ドイツのワーキングカルチャーは「完全個人主義+完全成果主義」なので成果が重要であるリモートワークとの相性は元から良いこともあるでしょう。
本書『リモートチームでうまくいく』で私がとても共感できるのは、同じスピリットをリモートワークへの取り組み方から感じられる点です。そして、「完全個人主義」という日本のワーキングカルチャーとは異なる海外の事例からやり方をただコピペするのではなく、日本らしいチームワークを大切にしたやり方を試行錯誤の上編み出した点が本当に素晴らしいと思います。
もはやリモートワークは特別な働き方ではない
本書の第1章はこの言葉から始まっています。そして、この言葉こそ本書のメッセージをすべて統括しているかのようです。
なぜならこの働き方を推進するまでもなく、今後リモートワークは多くの会社が考慮せざるを得ない状況になっていくからです。海外のデータですが2015年に「FlexJobs」が出した研究によれば30%の労働者はよりフレキシブルな仕事スケジュールを得るためなら給料が10〜20%カットされても構わないと回答しているほど。人々の間で仕事に対する考え方が変わっています。
そして、より多くの人が「リモートワーク」という選択肢を知ることでそのスピードは加速すると信じています。
その理由をもっと詳しく知りたい方はぜひ本書を手に取ってみてください。私的にかなり得るものが多い一冊でした。
ちなみに、9/11(日)に行う自身の勉強会でも本書の内容の一部に触れたいと思っているので、ゼミに参加される方もぜひ参考にしてみてください。