いろんな世界の間にいる感覚

ヨーロッパで暮らし始めて、早くも6年目に突入した。

ヨーロッパに来る前と今を比べて自分自身に起こった大きな変化と言えば、割と誰とでもそこそこ仲良くできるようになったことだと思う。それは、ただ単に良いことのように聞こえるかもしれないが、知らない土地で生きていくサバイバルのために必要だった。日本にいる時から人の集まる場所が好きで人は好きだったけれど、自分と価値観が完全に異なる人と付き合うということは自分にとってかなりの苦痛を伴うもので、自分と合わないな〜と思う人がいれば自然と避けていたように思う。それにより、自分は価値観の合わない人と衝突することなく快適に暮らすことができ、また自分の信じることを疑うことなく手放しで信じることができて、ある意味幸せなことだったとも思う。

 

誰とでもコミュニケーションができるということは自分の世界が広がり、好奇心が満たされるという楽しさを享受できることだ。その一方で、自分の”持っている”(と信じている)価値観など決して絶対的なものではなく、自分が信じていた悪や正義はコインの表と裏で実はそこに明確な境界線がないのだということを思い知らされる。いろんな人と繋がれば繋がるほど、世の中がよく分かるようになり、同時に分からなくなるという不思議なパラドックスを体験する。

 

文章を書くということは、必ず一定の視点に立って物事を綴ることになる。それは文章の宿命であり不可避な事だ。しかし「一定の視点」なんてものが絶対的でないと分かった時に「それでも何かを書く意味ってなんだろう?」と自問自答して全く文章を書く気になれず、書かなかった時期もあった。これは曲がりなりにも物を書くことを仕事にしている身からすれば辛いことで、「私は何がしたいのだろう?」と多くの時間をその悩みに費やした。もし、文章を書くことがそこまで好きでなければ悩まなかっただろうと思う。ただ単にお金を稼ぐための手段として自分のパーソナリティと切り離して考えることができたらどんなに楽だっただろうと。でも、文章が好きだからこそ悩むのだ。

 

最近やっているメルマガの企画で、連続して「自分のやりたいことを実現したはずなのにやりたいことが分からなくなっている」という相談を頂いた。特筆すべきは、相談を寄せてきてくれた人達は皆、自分のやりたいことを追い求めてこれまでいろいろなことに挑戦し、努力し、晴れて海外に住んでいる、ということだ。私自身も、上に書いたように同じような悩みにぶち当たったからこそ、このメッセージを送ってきてくれた人の気持ちが痛いほど分かる。しかもこの悩みは周りからすれば「やりたいコトやってるのに何が不満なの?」と思われがちでなかなか理解してくれる人もいない。贅沢な悩みだと思われることもある。しかし、海外に住むこと、そしていろんな人と交流していろんな価値観を吸収するということは「絶対的だと信じていたあらゆる事柄を手放していく」という恐怖と常に隣り合わせなのだと思う。

 

巷では、いろいろな価値観に触れて新しい価値観を創造していくことの明るい面ばかりが取り沙汰されている。言ってみればコインの「表面」だ。でも、コインがコインであるためには「表」だけでは成り立たず、必ずそこには「裏」がセットになっている。私は、今自分が海外にいていろいろな人と交流していることの意味は、そうした恐怖を見つめながらそれでも前向きに生きていくこと。そこに学ぶべきレッスンがあるのだと思っている。

 

そういう意味で、私はこちらに住んでいる移民の友達から多くのことを学んでいる。

アフリカからきた人、インドから来た人、シリアから来た人、パキスタンから来た人、みんなみんな生きる力が強い。彼らのバイタリティにいつも勇気をもらう。皆、自分の生活を良くするために、人生のチャンスを掴むために言葉も知らない異国にやってきて、文句も言わず必死に目の前のことを頑張っている。そして、目の前にあることを精一杯楽しみ、人生に悲観的にならない。ちょっとでも嬉しいことがあれば、踊ったり、お祝いしたり、その時その時を一生懸命楽しんでいる。こういう姿は日本人から見ると能天気に見えるかもしれない。でも、それは「能天気でいられる時が少ないから」ということの裏返しでもある。信じられないほど辛いことを経験したアフリカ移民の友達が、紆余曲折あって流れ着いたお世辞にも綺麗とは言えない移民シェルターの二段ベッドの個室で私に「どんなことがあっても絶対に希望を捨てるな」と笑顔で言ったあの瞬間も、きっと一生忘れないだろう。

 

「どんな時でもハッピーでいること」

「今を全力で楽しむこと」

「善悪でジャッジしないこと」

 

これは私がこちらで暮らしている中で、自分の体験として学んだ教訓。でも、言葉でわかっていても、時に忘れてしまう。だからこそ、私はまだまだ試されているのだと思う。

 

「やりたいことがわからなくなった」というメッセージをくれた方々にも、だからエールを送りたい。その悩みは、もっと根源的な幸せや心の平穏に近づくために必要なエッセンスなのだということ。悩みがあるからこそ、「どんな時もハッピーでいること」が大事だってことに気付けるのだから。

 

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2015年からドイツ・ベルリンに在住し、現在はポルトガルにも拠点を置きながら世界中を飛び回って仕事をするスタイルのwasabiがあなたのビジネスを広げるアンバサダーとしてイベント主催、MC/日英独通訳、現地リサーチからコンサルまで承ります。

 

現在はモビリティ、インフラ、BlockchainとAI、アート関連のお仕事を中心に承っていますが、特にジャンルは問いません。

 

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